Journal Club (2025)

Genes Nutr, 20(1): 9 (2025)

代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、世界の成人人口の約30%が罹患する最も蔓延した慢性肝疾患の1つである。MASLDでは肝細胞への過剰な脂質蓄積を特徴とし、肝障害を招いて代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)や肝硬変、さらには肝細胞癌のリスクを高める。また、MASLDの罹患率の増加は、肥満や2型糖尿病、メタボリックシンドロームの有病率の上昇と密接に関連しており、公衆衛生上の問題となっている。MASLDの重篤度は認識されている一方で、その発症と進行の根底にある分子メカニズムは十分に解明されていない。

肝臓は均一な臓器ではなく肝葉間で代謝機能に大きな不均一性を示すことが明らかとなっている。これは肝血流や酸素化勾配、肝葉間での遺伝子・タンパク質発現差などに起因しており、脂質代謝や酸化ストレス応答、免疫調節に関わる酵素(FASNACCなど)の局所発現変動がMASLD進展への部位依存的脆弱性を生む可能性がある。しかし、これらゲノム・プロテオミクスレベルの知見に対し、代謝物・脂質プロファイルの肝葉特異的変動の解明は未だ不十分である。

この論文の目的は、複数の肝葉を網羅するMASLDマウスのメタボロームアトラスを構築することで、脂肪肝疾患に関連する動的なメタボロームの変化を網羅的に明らかにすることである。この論文中で行われた研究によって、過栄養によるMASLDの進行中に、マウスの肝臓では脂質とアミノ酸の代謝が大規模なリモデリングを起こすこと、特にL1では疾患進行中に脂質とアミノ酸に対する感受性が高まるという肝葉特異的な代謝反応を示すことが明らかになった。

Front Bioeng Biotechnol, 12: 1347995 (2024)

この論文では、皮膚の再生とリモデリングを可能にする新たな創傷被覆剤を開発したことが紹介されています。

創傷被覆剤は、外部からの損傷から保護する絆創膏やガーゼの他に、刺激に応答して薬剤を放出する被覆剤などが研究されてきました。これらは一長一短で実用化は困難であり、新たな戦略の開発が求められている状況です。この状況を受け、近年再生治療の分野が重要視され、中でも生理活性成分を保持したまま抗原成分を除去できる脱細胞化を行った細胞外マトリックス(dECM)はバイオマテリアルとして注目されています。臓器・組織由来のdECMは本来の三次元構造と豊富な活性成分を保持できますが、免疫原性、疾患伝染のリスクが問題になります。しかし、このリスクを回避できるin vitroで培養した幹細胞由来dECMについての報告はほとんどなく、創傷リモデリングへの影響は未だ明らかになっていません。

この論文では、組織の再建や修復に広く応用されているヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADSC)から抽出したdECMを用いて、皮膚再生に取り組んでいます。この研究を通じて、新たな創傷治療法としてADSC-dECM-CMCパッチの開発に成功し、このADSC-dECM-CMCが皮膚創傷モデルマウスにおいて、血管新生の活発化を起因として、創傷退縮および創傷リモデリング促進作用を示すことが明らかになりました。